「高村さん?」
声をかけられ、あたしはゆっくりと顔を上げた。
「…安藤先生?」
目の前には、腰をかがめてあたしをのぞき込むように、安藤先生が立っていた。
「いつまで経っても来ないから教室まで来てみれば、どうしたの?
ショートホームルームなんてとっくに終わったのに」
言われてキョロキョロ見回してみると、確かに教室には誰もおらず、
外はすっかり暗くなっていた。
「打ち上げをやるって他の生徒から聞いたから、それに行ってしまったのかとも思ったけど、
どうやらそうでもないみたいだし」
「打ち上げ?」
何の打ち上げなんだろ?
百人一首大会で頑張ったから?
あたしの言葉を聞いて、安藤先生は眉を寄せた。
「…大丈夫? クラス優勝とグループ優勝両方のお祝いの打ち上げでしょ?
そんなことも知らないなんて、今日はいつも以上におかしいよ」