樋渡さんはあたしの肩に手を置き、耳もとにそっとささやいた。



「え!?」


あたしは驚きで固まったまま、瞳だけを大きく見開いた。



賭けって何?


また佐野先生に近づくなってこと?



「前はちゃんと決着出来なかったでしょ。百人一首大会で決めましょう」


「賭けって…何を――」



のどがカラカラでうまくしゃべれないよ。



「今回は前とちょっと変えるわ。もうすぐバレンタインでしょ?

勝ったら佐野先生にチョコ渡して告白する権利、負けたら何もしちゃダメ。

勝ち負けはその日最後の試合でゲットした札の数で決める。どう?」



「あたしは――」


そんな賭けでできないよ。



だいたい、勝っても告白なんてできない。