「やっ…と、見つけた…」
あたしを包む温もりから、息を切らした声がした。
それは、間違えるはずもない。
あたしの大好きな人の声。
「さ…佐野先生…?」
顔を上げたその先には、あたしを抱きしめながら優しく微笑む顔があった。
「よかった。無事で」
佐野先生があたしを強く抱きしめた。
「ど…して…、樋渡さんは…?」
「おまえが泣いてる気がして放っておけなかった。
でも、樋渡がなかなか離してくれなくて、遅くなってごめん」
樋渡さんよりもあたしを選んでくれた。
それはうれしいの。
でも――。
「…何で樋渡さんと一緒にいたの?」
お願いだから、笑って答えて。