手を放してくれないから、不思議に思っていると、先生は左手もつかんで体勢を変えた。
右手は肩の上、左手は前に伸ばされていて、オクラホマ・ミキサーの最初のポーズだった。
「はい、まず左足からツーステップ」
佐野先生の手取り足取りの教えでいっそう恥ずかしくなった。
何でだろ?
委員長の時は気にならなかったのに、
心臓の音が聞こえてしまいそうなほどのその近さに、ドキドキが止まらなかった。
あんまりうるさく鳴るもんだから、本当に聞こえそうな気がして、落ち着かない。
「うきゃっ」
「…高村、何でただ前進するだけで転ぶんだ」
佐野先生の呆れた声が聞こえて、あたしはなんだか泣きたくなった。
緊張して、足がもつれたんだから仕方ないじゃないと言い返したいのに、声がでない。
もっとうまく踊れたらいいのに。