その一言だけしぼり出すと、きびすを返して、安藤先生から逃げた。 「千沙!」 後ろからあたしを引き止める声が聞こえたけど、止まることはできない。 お願い、呼ばないで。 わからない、 わからないの。 ただひとつわかるのは、もう昔には戻れない。 それだけ。 あたしの気持ちは、昔に戻りそうにはなっても、昔と同じじゃない。 今のあたしは――。