昨日もだけど、体育館にもうけられた客席にたくさんの人々が座っているのを見ると、

緊張で体がガチガチになる。



「そんなに緊張しなくても、いつも通り演じればいいよ。練習だと思ってさ」


あたしの隣に立つ鷹井くんの余裕発言に、あたしはうらやましくなる。



いつも通り、いつも通りと自分に言いきかせているうちに、とうとう幕が開いた。



灰かぶりの格好で舞台に立って、あたしはドキッとした。


なんと客席に座っている佐野先生と目があったんだ。


佐野先生は一列目の真ん中、とても見つけやすい席に座っていた。



しばらく、あたしはセリフを忘れて先生と見つめあっていた。



同じ舞台に立っていたれみちゃんの「セ・リ・フ!」という小声が耳に届いた時には、

不思議と先ほどまでの緊張が嘘のように消えていた。





舞台は進み、いよいよクライマックスに差しかかった。



問題のキスシーン。