「もしかして、本番では本当にしろとか言う!?」
あたしは勢いよく委員長に詰め寄った。
「あたり前だろ」
と答える委員長を見て、軽くめまいを覚えた。
でも、そんな場合じゃない。
あたしは後ろを振り返って鷹井くんに同意を求めた。
「ねぇ、鷹井くんも劇だからって皆の前でキスなんて嫌だよね!?」
だけど、鷹井くんの笑顔によって、淡い期待はすぐに打ちくだかれる。
「俺は構わないよ」
「え!?」
嘘でもいいから同意してほしかったあたしは、
もうどうしたらいいかわからず、眉をへの字に曲げることしかできないでいた。
「それより委員長。このままじゃラチあかないし、高村とふたりで練習してくるよ」
あたしのことなんてお構いなしで鷹井くんは委員長に告げると、
あたしの手首をつかんで歩き出した。