「何、これ。台本?」
それは、シンデレラの台本だった。
あたしが答える前に先生はパラパラと台本をめくった。
それを見て、顔がひきつる。
「あっ、はい。文化祭のっ」
例のキスシーンが載っている台本だ。
見られたくなくて、あわてて台本に手をのばしたけど、佐野先生の方が早かった。
「…キスシーン、あるんだ?」
低い声が怖い。
さっきとは違う意味で、再び心臓が早鐘を打ち出す。
「相手、誰?」
「…鷹井くんです」
佐野先生が驚くほど真剣な瞳で見つめてくるけど、
あたしは目を合わせられなかくて、うつむいて答えた。
「…………」
「…………」
ふたりともしゃべらない。