考えたことないなんて嘘になる。
「…好き、だけど。でも、鷹井くんの言う好きとは違う」
ひとりで呆然として歩いていると、後ろから呼び止められた。
「高村?」
左肩には手の温もりを感じる。
焦点の合わない瞳で左後ろを見てみると、かろうじて佐野先生が立っていることがわかった。
「高村、何でまたひとりなんだ? 鷹井はどうした?」
あの後、気まずくなって、送ってくれるというのを断ってきた。
せっかくの花火大会なのに、いつ花火が終わったのかすらわからない。
そんな状態であたしはただ歩いていた。
「高村?」
無言のあたしに先生がもう一度問う。
でも、答える気にはならない。
「とにかく、ひとりは危ないから送っていくよ」