「行こう、高村」
佐野先生が返事をする前に、鷹井くんがあたしの手をつかんで、
佐野先生に背を向けるように歩きだした。
「……ッ!?」
あたしは驚きで声も出なかった。
鷹井くんは一体どうしたのだろうか?
そのまま手を引かれ、速足の鷹井くんに着いていくと、屋台のあるスペースまで戻ってきた。
あんず飴や焼きそば、金魚すくい。
目移りしちゃうものであふれているのに、鷹井くんは目もくれない。
ひたすら無言で進んで行く。
「鷹井くん?」
あたしはダメもとで声をかけてみる。
すると、鷹井くんは足を止めた。
そう思ったのもつかの間で、ふり返った彼の温もりに包まれていた。
「え…、鷹井くん!?」