だけど、速く走れない。
ここは屋台が並ぶスペースで、砂浜よりは短い階段で区切られた上にあり、
大きなジャリが敷き詰められていた。
地面がボコボコしていて、とても走りにくいのだ。
その上、足元は履き慣れない下駄。
状況は最悪だ。
「きゃっ」
ジャリに足をとられ、あたしの体は大きく傾いた。
今度こそ本当に転ぶ。
あたしはそう思いながら、固く目を閉じたけど、またもや転ぶことはなかった。
お腹には温かい感触がする。
瞳をゆっくりと開いていくと、後ろからのびてきた大きな手があたしを支えていた。
恐る恐る後ろを見ると、佐野先生の顔があった。
佐野先生の後ろに小さく見えるのは安藤先生の姿だ。
すぐに顔を前に戻したけど、ジャリ…ジャリ…と音が近づく。