「楽しみね」
「だね!」
れみちゃんに返事して、あたしも席を立った。
とにかく佐野先生に会わないように、早く学校を出ちゃおう。
7時まではまだまだあるけど、浴衣出してもらわないといけないし、
今日はまっすぐ帰ろうかな。
日が沈みかけた頃、あたしは再び、ひとりで電車に揺られていた。
…何だか変な感じ。
朝以外の時間にこの電車に乗っていることもそうだけど、
学校へと向かう電車にひとりで乗っているという事実に特に違和感があった。
あの痴漢にあった4月から、
いつも佐野先生が地元の改札まで来てくれて、一緒に乗っていたからだ。
一緒に登校を始めた頃は他の生徒に騒がれたけど、
そのうちその理由まで知れ渡ったのか、今では何も言われなくなった。
あたし自身、佐野先生と一緒ということにずいぶん慣れてしまっていたようだ。