「ほら、おまえら。テスト前にこんな遅くまで残ってるなよ。

勉強するのもいいが、ほどほどにしろ」



夏とはいえ辺りはもう暗くなり始めていた。


あたしの前にいる鷹井くんが、先生の言葉を聞いて、身じろぐ。



「わかりました。高村さん、一緒に帰ろうか?」


前半は佐野先生に向けたもので、後半はあたしに。



笑顔で言われて先生の前で断る理由もなく、

あたしはただうなずくしかなかった。



しかし


「あー、悪い。高村にちょっと話があるんだ。高村だけ残ってくれるか?」


あたしは喜んでうなずいた。




鷹井くんがしぶしぶ立ち去り、その姿が見えなくなると、佐野先生が突然大声をあげた。



「はぁ~、マジであせったよ!」


佐野先生はずるずるとしゃがみ込み、うなだれた。



「せ…先生?」