鷹井くんはあたしの後ろの壁に両手をついた。
顔の両横に鷹井くんの手があって、完全に逃げ道をふさがれてしまった。
じっと見つめる真剣なその瞳に、あたしはたえられたなくて、
顔を背けた。
「…こっち見て、高村」
あまりに寂しげな声に、あたしはビクッと体を震わせた。
横目で鷹井くんの姿を確認しようとすると――。
「…………!!」
彼の顔がありえないほど近くにあり、息が止まった。
少しでも動けば、唇が当たるかもしれない。
あたしは呼吸一つ、することすらままならなかった。
「高村、俺さ、俺…」
彼が何かを言おうとするのを、あたしはずっと横目で見ていた。
まるで金縛りにあったかのように、そらすことができなかった。
さらに鷹井くんが顔をよせ、彼の息がほおにかかる。