「大丈夫、私が伝授するから美味く出来るって」

「……うん」

美味く出来てもあげる予定……ないんだけどなぁ。


「その前に……」

「何?」

「うん、決めた」

「だから、何?」

悪戯な笑みを浮かべた祥子は会計を済ませ、再び私の手を引いて歩いた。

景色を楽しむ暇もなく、白い息だけが弾むように出され、一つの場所に辿りついた。

手押し扉を開けると

 ― カララン

小さな鐘が鳴り響く。

「「いらっしゃいませ~」」

一斉に掛かる声と、シャンプーの香りが、一気に入り口扉のところまで運ばれて来た。

美容院?