「ふざけんな。誰が回るかよ」


「やーん、須藤怖ぁい」


嫌がる零なんてお構いなしでさらに腕を絡めて寄り添う女子高生。


何、あれ……。
いつもあんな感じで女子は、零にくっついてんの?
何か……嫌だ。
零の執事姿は見惚れちゃうくらい格好いいけど……。
あぁやって密着されるのは嫌だ。


ムスッとしながら睨むように零を見ていると、パチッと零と目が合った。


……あ。


慌てて逸らそうとしたけど、逸らせない。
視線を逸らせない自分に戸惑っていると、零は自分の腕にしがみ付いている子の腕を無理矢理外して、あたしの方へ歩み寄ってきた。


「きーちゃん来てたんだ。こっちくればよかったのに」


そう言って零はフッと微笑んだ。
その瞬間、あたしを突き刺す冷たい視線。
周りの女の子達が一斉に、あたしに視線を向けている。


……視線が、痛い。


その視線が痛すぎて、ここから逃げ去りたい気持ちでいっぱいになった。
すると零は手のひらを差し出して、その手の上に手を乗せるように促した。


「……どうぞ?」


そう微笑まれて、思わず顔を赤らめる。


だって……。
そんな格好いい格好で微笑むから。
あたしだけに笑うから……。


あたしは俯きながら手を乗せると、それと同時に零はキュッと握る。
その瞬間、あたしの心臓はドキッと大きな音をたてた。
ゆっくりと顔を上げると、いつもと違って零は優しく微笑んだ。


「行きましょうか、お嬢様」


そう言って零はあたしを連れて教室の中へと入った。
すると中にいるみんながあたし達に視線を向ける。


どうしよう……。
すっごく恥ずかしいよー……。