あまりにも不意打ち過ぎて、息が続かない。
呼吸もできないくらいに密着した唇に、あたしはギュッと目を閉じた。


息……できない。
苦しいぃ~!!


あたしは声にならない叫びを、須藤の胸を叩いて表現する。
すると須藤は、ゆっくりと唇を離した。


「はぁ……はぁ……」


……く、苦しかった。


解放され、あたしは思いっきり空気を吸った。
肩を揺らしながら呼吸をするあたしを見て、須藤は目を細めながら言った。


「須藤って呼ぶんじゃねぇよ」


「……はぁ?」


言っている意味が分からず、キョトンとしていると、須藤は眉間に皺を寄せた。


「さっき、須藤って呼んだだろ?」


その言葉を聞いて、あたしは我に返る。


あ……。
そういえば、……そうだったかな?


いまいち自分が須藤って呼んだか覚えていない。
もし呼んだとしてもさ……?


「今までそう呼んでたんだもん。仕方ないじゃん」


慣れちゃってるんだもん。
そりゃ、無意識に呼んでもおかしくないでしょ。
すぐに慣れる方がすごいと思う!


心の中でそう叫んでいると、須藤は意地悪な笑みを浮かべあたしを見下ろした。


「じゃぁ、これから須藤って呼んだら……キスな」


「は、はぁ~!!?」


キスぅ!?


「何でそうなるのよ!」


あたしはギョッとして睨みつける。
すると、またまた意地悪な微笑みを崩さずに口を開く。