恋の攻略法

「私そろそろご飯作らなきゃいけないんで、もう切ってもいいですか？」
「あ、そうですか
　すみません
　工藤さん主婦の方なんですよね
　じゃあ明日またお電話していいですか？
　明日何時ごろかけていいですか？」
「明日ですか？
　お昼ぐらいならいいですけど」
「じゃあ、お昼前に電話していいですか？
　ところで工藤さんは今何してたんですか？」
「え？犬の散歩ですけど」
「あ、だからハァハァ言ってたんですね
　どうしたのかなと思いましたよー」
「え？ハァハァ言ってました？
　すいません、アハハ」
　なんかちょっと恥ずかしくて、その時はテレ笑いで電話を切った。

　次の日、お昼前の１１時にＫＪ企画の野崎さんから電話がかかり、昨日の続きを。
彼はこっちも賭けなんだと言っていた。
何百万もの攻略法を会社で買っても使う人がいなければ意味がないし、儲からない。
使ってくれる会員様あっての会社なんだと。
でも信用して情報を出しても大人数で使ってダメにしてしまったり、情報を売って金儲けをする人もいる。
それを組織で盗んでいってしまう場合もあると。
だから家庭を持っている主婦は比較的信用できるらしい。
でも、どれだけ説得されてもヤクザ関係の会社じゃないとは言い切れない。
もし、内緒で攻略法を買っていることをバラすぞと脅されたり、情報を持って辞めてしまった後、子供を脅されたりしたらどうしよう。
私はゾォーっとした。
「いや私は、エヴァンゲリオンにゲーム的にハマっただけで
　台を購入して家で一日まわしてても全然いいんで
　お金にもそんなに興味ないですし
　勝つことにはこだわりたいんですけど
　もうパチンコもやめるつもりなんで…」
それでも彼は続けた。
「いや、お金に興味ない人の方がいいんですよ
　そのほうがより信用できます」
　今思い返せば、きっとお金に興味がある人にも「お金に興味があるのならこんないい話はありません」って感じだったんだろうなと思った。
野崎さんはとにかく、口がうまいという印象だった。
「うちの永久会員になれば情報も好きなだけ出せますし
　もちろん一人一人プロをつけて指導してもらいます
　プロはいわば保険のような感じです」
【永久会員】…ふーん、じゃあ一応値段をと聞いてみると、５０万円！！