「あら、電気も点けていなかったのね?」



生きた年数だけしわが刻まれたお婆さんは、目の焦点が定まぬ様子で私達を見ている。



その時、私は初めて、

このお婆さんが目の見えない盲目だという事に気が付いた。

お婆さんは、テーブルの上にあるお茶の急須を手探りで見つける。



「お茶入れるから、こちらへいらっしゃい。」



急須の中の古い茶葉を捨て、茶筒を開いて新しい茶葉を入れる。


慣れているようで危なっかしい手つきに、少年は私からナイフを放してお婆さんに歩み寄る。



「いいですよお婆さん、後は俺がやりますから。」



内ポケットにナイフをしまいながら、お婆さんの持っている急須を手に取ると

お婆さんはすかさず少年の手を握った。



「あらまぁ、体冷やして。」



まるで幼子を心配するような口調で告げながら、少年の濡れた肩に触れる。



「雨に降られたのね?可哀想に。」



「いえ、今日は朝から雪です。辺り一面が、綺麗な雪化粧でしたよ。…雪触りますか?」



少年がベランダの雪を取ろうと、リビングのカーテンを開いたが

お婆さんは首を横に