よろりと一歩ふらついた葛城に、カインは止めとばかりに言い放つ。
「サイバノイドよりも、僕らバイオノイドの方が優秀であるということですよね」
──違う。こんな……
イヤイヤをするように微かに、それでも傍目からもわかるくらいに、首を無意識に左右に振る葛城。
カインは、彼の言葉を否定するかのような彼女の仕草など全く気にも止めない。
高揚したカインの言葉はとどまる術(すべ)を知らぬかのようで、止めどなく溢れていく。
「よくヒトは、外道な行いに『血も涙もない』と言いますが、まさにサイバノイドは血も涙もない。僕らとは違う、ただの機械なのですよ」
「黙れ!!」
カインの饒舌さを打ち破り、来栖が反論をぶつける。
鬼気迫るその物言いに一瞬ひるんだカインを憎々しげに睨み付け、来栖は言葉を放った。
「俺たちこそがヒトに似せられて造られた!
姿形(すがたかたち)、思考、全て……全てだ!!
体こそ機械で出来ているが、心、魂はよりヒトに近い存在だ!
お前らなんて……」
そこまで言って、はたと口をつぐむ。
そして忌々しそうに唇をかんだ。