ひとまず危機は去ったようだが、態度を視線の応酬に変え、ピリピリとした雰囲気はまだ続いていた。
二人とも黙り込んでしまっているため、余計に緊迫した空気を作り出している。
葛城は、その膨らみ続ける風船のような雰囲気を刺激しないよう細心の注意を払いながら、そっと言葉を滑り込ませた。
「どうしたと言うの……?」
葛城の呟きは、乾いたガラスのように脆く掠れていた。
拾われることのないまま、床に転がっていったような錯覚を起こさせる。
「来栖」
呼ばれた名前に、小さな反応があった。
「説明して」
畳み掛けるように言った葛城の言葉に反応したのは、カインだった。