返事をした葛城に向かって、来栖がすがるような視線を向ける。

 嫌な予感がじわりと葛城の中に広がった。気付かないうちに眼鏡に手を触れ、下がってもないのに顔に押し付ける。


 「カインです」

 凝視したドアからその名が聞こえたとき、葛城は思わず反射的に来栖を見た。


 来栖は、唸るような顔をしてドアを睨み付けていた。彼のそんな表情は見たことがなくて、葛城は恐ろしくなった。
だからカインの入室を断ろうと思ったのに、カインは許可を待たずにドアを開けた。そしてその直後に来栖を見つけ、戸惑いの表情を浮かべる。


 少なくともカインは来栖に対して敵対心を持っていないらしいと胸を撫で下ろしたが、ではなぜ来栖は敵意を持っているのだろうと不思議に思う。


 その視線が来栖に届いたのか否かは定かではないが、はっきりと言いはなった言葉に葛城はひどく驚愕した。