「……いや、もうない」

「そっか。じゃあゲームの続き早くしたいから、私、先帰るね〜」


早口で喋るだけ喋って雪村は走り去った。


って、おい!
ちょっと!!
待ってくれよー。

何だ、これ?
夢か、現実か、幻か?


現実逃避も早々に仕方なく現実を受けとめた。

ゲームのやり過ぎですか、と。


「何だよ、それ……」


髪をくしゃくしゃと掻き毟り、力の抜けた肩はがっくりと落ちた。

空を見てたのも、涙目だったのも、ただ眠かっただけ……。

しかもその理由が、ゲームのやりすぎって。
どんなキャラだよ、おい。
何だよ、それ。


完全に力の抜けたオレは、その場に倒れるように屈んで頭を抱えた。

ただの勘違い。

初めてまともに話して分かった。

オレが守ってやるようなタイプじゃなくて、オレを守ってくれるような、そんなタイプだと。


さしずめ、勇者ってとこか?

あまりの脱力感に頭がさらに垂れる。


「はぁ。オレだっせーっての」