赤いバイク…



まさか!!



あたしは必死に走って近づく。

「う〜」

聞き覚えのある声。

「井上さん!!」

あたしは叫んだ。

「や…やあ!!」

痛そうな顔をしながらバイクの下敷きになってる。

「おいおい…」

光さんは井上さんとバイクの位置を確認すると出来るだけ井上さんに当たらないようにバイクを起こした。

「重っ!!後ろ、積みすぎや!!」

バイクを起こしたのは良かったけど、後ろのキャリーボックスに重心が寄り過ぎて前輪が浮く。

サイドスタンドではとてもじゃないけれどバイクは立ってられない。

光さんは力任せにセンタースタンドで立てた。

「あー!!」

あたしは叫んだ。

前回転倒して応急処置をしたステップが完全に折れていた。

「何の騒ぎ?」

外の騒ぎに気がついて祥太郎が家から出てきた。

「おお!ドゥカティ乗りの彼女!!また派手に転んだな」

祥太郎は井上さんの腕を引っ張って体を起こした。

「ありがとう…」

井上さんは申し訳なさそうにしょんぼりする。

「これはもう乗られへん。
代わりのバイク用意してもらった方がええわ」

光さんがそう言うと

「むっちゃん、家で怪我の消毒したって。
俺が電話しとくから」

と、携帯を取り出した。



井上さんは肩をガックリ落としてあたしの後に付いて来る。