その旅人は、特に何をするでもなく集落で過ごしているように思えていた。

しかし、次第に長老をはじめ集落の権力者たちの様子がおかしくなり始めたのに気づいた。

気づいたときにもうすでに遅く、私はアキ様の教育係をはずされ隣国の偵察に行くように仕向けられていた。

「なぜ、私が行かねばならないのですか!私はただの教育係、偵察など無理です。私は、アキ様の側についていなければいけないのです!!」

必死の訴えにも長老たちの考えは変わらなかった。

「アキ様の決めた事じゃ。もう、アキ様に近づいていかん。わかったな。もし、従わないようならそれ相応の措置を取らせてもらうぞ」

焦点が定まらず、何も見ていないような目で、まるで何かを読んでいるかのような口調の長老の姿。