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ある旅人がこの集落を訪れたのだ。

その旅人は、全身をゆったりとした黒い布で覆い、顔にも黒い布が巻かれていた。

外気に皮膚をさらしているのは目の部分のみ。

そこから見える暗い瞳は、今まで出会ったことがないほどゾッする冷たい眼差しをたたえていた。

布越しに聞こえる声は、男女の判別さえつかないほどくぐもって聞こえた。

しかも背の高さは男にしては低く女にしては高いように思われた。

体型もそのゆったりとした布のせいではっきりとはしない。

私は、アキ様の教育係であったためほとんどの時間をアキ様とともに過ごした。

だから、謎の人物と言葉を交わす事などなかった。

そして、それが仇となった。