「弥月ー!!」


…無反応。


「弥月ー!!」


何あいつ。

ボードの上で爆睡してる…。


あんなのあり?


おかしいでしょ?!

何なの?!


けど…そう思いながら

心の奥底では

弥月だからな…、

と、なんとなく納得している
自分がいるのも事実だ。


「弥月…。」


そっと近づき、
ボードにもたれかかる。


波に揺られるボードの上で、
自分の腕を枕にして、
月の明かりに照らされて…

なんだか、

海の王子様のようだった。



「あんた、一体何者なのよ。」


弥月のボードに
そっと乗り、

弥月の隣に並んで寝る。


月と星だけが見えた。


「綺麗。綺麗だね。弥月…。」


寝返りをうつ。

弥月の背中が1センチ前に
見える。


そっとふれてみると
すごく暖かかった。

生きてるって
強く感じさせる、
温度だった。


上半身を起き上がらせる。


「弥月。私はずっとここにいるよ。弥月のすぐ傍に。弥月のすぐ隣に…。」


顔にかかっていた髪を
そっとどける。

少し湿った髪は
砂浜の砂のように
するりと手から
すりぬけた。


「やわらかい…。」


少し興味本位で
弥月の髪を
いじってやろうと
思った。

けど、
砂のような髪は
何故か触っていると
安心できて、

気がつくと
自分のために
弥月の髪にふれている
自分に気がついた。


「こんなに潮水浸かってるのに、全然痛んでないんだね。」


髪を海に浸けてみた。


不思議な事に、
髪は命を
取り戻したかのように、

きらりと
輝いてみせた。



顔を覗きこむ。

起きる気配すらない。


「こんなにしてもまだ起きないか!」


独り言を海にポツリと
呟いてみる。




ふと
弥月の顔を
覗き込み、



弥月のおでこを
一撫ですると、






瞼の上に


そっと優しく






キスをした…。