「はー。」


思い切りため息をつく。

俺は自分でも驚くほど
興奮していた。


沙鵺…。

お前は本当に凄いよ。

心底びっくりした。

お前に伝えたい。

お前の凄さを。


お前は何て言うかな…。


「弥月?どうしたの?」

「頭でも打った?」


そう言うに決まってる。

でも、分かってても
伝えたい。


自分にもっと自信を持てれば、

それだけであいつは
世界に出れる。


コツン


水面に漂う俺の
左脇のあたりに、
俺のボードが当たる。


「お帰り…。」


少し呟き
ボードの上に寝そべる。

瞼を閉じて、
足の裏の神経に
全神経を集中させる。


あの波の感触が蘇る。


そして
いつもの波の感触に
変わる瞬間…。


体の芯からぞわっとした、
妙な寒気に襲われる。


全身、鳥肌がたった。


なんで今まで
気づかなかったんだろう。

あいつの周りでは
俺の周りと
違う風が吹き、
違う波がたっていた。

それは
出会った日から
感じ、知っていた。


ただ、ここまでとは…。


あいつ…
まじ、すげぇよ。


心の中で呟き、
自分の言葉にほくそ笑む。


そして、
波に揺られ、
深く浅い眠りに
ゆっくりと落ちていった。