「乗ったよー。」

「お前…。」

「何?」

「何か飛び乗った…?」

「え?普通飛び乗るでしょ?」


普通?

そうなのか?

本当に普通なのか?

分からない。

けど、
こんなに小さく、
こんなにも
不安定である。

そんなボードに
あんなにも簡単に
飛び乗る事が
出来るものなのか?

俺も自分のボードには
飛び乗っている。

けれど、
安定感がまるで違う。


俺のボードに
飛び乗るのは、

プールから
プールサイドに
あがるとき
のようなものだ。

けど、
こいつのは

プールで
ビート板に
あがっているような
感覚なのだ。


それって
本当に
簡単に出来ることか?


「弥月ー。ちゃんと見てた?
弥月もこうやって、やってみてごらん。」


はい。
と、簡単に
俺にビート板のような
ボードを渡してきた。


無理だろ…。


そう思いつつも、
沙鵺のように
飛び乗ってみる。

頭から
海にまっさかさま…

そう思っていた。



なのに…


「乗れた…?」

「わぁ!やったね!」


沙鵺が
隣で拍手している。





隣?




…もしかして…




目を閉じてみる。





足の裏に当たる
波の感触が
いつもと違う。



もしかして…


こいつが
近くにいるから
乗れた…?



波を捕らえ
ボードが進む。


沙鵺が
遠ざかる。


俺の目は
沙鵺だけを
追い続ける。



沙鵺…お前…。





しばらくすると
いつもの波の感触。




俺は

見事に

海に放り出された…。