海に
沈まされていく中で
弥月の顔を
ちらりと覗いてみると、

弥月は
満足げに
勝ち誇った顔を
していた。


深さは2メートルほど
だったため、
すぐに足がついた。


「何すんのよ!」

「お前が挑発したんだろ。」

「でも最後のはずるい!」

「何が。」

「…んー!」


そこまで話すと
私が先に
酸素不足になって
海上を目指しだす。


海の中で会話って…。


なんか可笑しい。


「ぷはっ!はぁはぁ…。」


慌てて
呼吸をする。

私はこんなに
苦しがってるのに、

弥月は
私の後から
ゆっくり
浮上してきた。


出てきた瞬間、


「テクニックなら、まだ負けられない。」


そう言って
にやりと口の端で
笑って見せた。


「最後、声かけられなかったら私が勝ってた!」

「どうかな。」

「むー!!」


その時、

後ろで口を
あんぐり開けて
私たちを見ている
目に気づいた。


「辰巳くん!辰巳くん、上手だね。びっくりした。」


声をかけても
反応は薄い。


「な、なぁ。聞きたいこといっぱいあるんだけど…。」


かえってきた返事は
これ…。


「何?」

「沙鵺ってプロ?」

「…はぁ?」


そしてこの
ありえない質問だった。