「おい。そろそろあがる…」

「あのさ!お互いのボード、どっちが先に乗りこなせるか勝負しようよ!!」


俺の話を遮って
沙鵺が提案を
してくる。

…提案なんてものじゃ
ないな。

多分、こうなったら
勝負せざるを得ない。


「…勝負?」

「うん!あ。もう時間じゃん!勝負は明日からねー。
あ、でも明日は弟来るのか。じゃあ明後日からねー。ばーい。」


それだけ言うと
沙鵺は
ビートバンみたいな
板に飛び乗り、

さっさと
行ってしまった。


本当に
勝手なやつだ。

けれど、

振り回されているのに
それを楽しんでる
自分がいるのも
また事実なのだ。


「とりあえず学校行くか…。」


いつの間にか
手元にボードが
近寄ってきていた。


いつもの事。

別に珍しくも
なんとも無い。



その時、



一瞬感じた
違和感を
ふと思い出す。









あいつのボードも
もしかして
自然に
帰ってくるのか…?



はっとして

沙鵺の帰っていった
方向を見る。




そこには
もう沙鵺の姿は
あとかたも無く、

明るくなった
町並みだけが
まばゆいていた。



穏やかな風が

俺の濡れた髪を

そっと

包んだ気がした。