俺は激しく
海に飲み込まれる。

抵抗はしない。

息の続く限り
沈んでいく。

あまり深くない場所
だったため、
すぐに海底に
背中が触れる。

目を開き、

海底から
海と空を眺める。

世界で一番
美しいと感じる
その画に、
心が震える。


海底で
寝返りをうち、
横を見る。

鮮やかな
イソギンチャクに
ーお前はあまり綺麗ではないねー
と、蔑まれた気がした。



息がもたない。



海上に
酸素を求めて
首を出す。


海は俺を
落とす事に成功し、
大喜びだ。

喜び、
嬉しそうに、
小さく細かい
波をあげて、笑う。

「笑い過ぎだ。」

お返しに
軽やかに波を
乗りこなしてみせる。


雨は
激しく降り続ける。


空を見ると
雲が朝より
薄くなっていた。



「明日は晴れるな…。」



明日、
それが
俺にとっての
もう一つの、
誕生日になるとは、

思いも
しなかった。