彼を見つめてて
感じた。


この人なら、
私の全てを
理解してくれる
かもしれない。




そして、
咄嗟に思った。

この人と
出会った事を
忘れちゃいけない。

この瞬間、
瞬間を、
一時も
忘れてはいけない。



風も
私を促すように
耳の辺りを
吹き過ぎる。




焦る。





「名前はなんていうの?」











やっちゃったよ。



最低だ!


私は自分について
あれこれ
聞かれるのが
大嫌いだ。

理由は…
一言で言えば
面倒だから。



私は自分に
誓いを立てていた
事がある。


それは
自分が嫌がる事を
人にしない事。


今まで
この誓いを
破った事は





ほぼ


なかったはず…



けど、

はっきり、
誓いを破った。



自分が恥ずかしい。




うつむく。




「…弥月(やつき)。」



あ。


普通に
返事がかえってきた。

…良かった。




心底安堵する。



ゆっくり
横を向き、
水平線を見る。



太陽の光を浴びて、
キラキラ
輝いている
海がある。


この人
いいな。


なんだか
ほっとして
涙腺が緩む。



こぼれそうになる
涙を
こらえるために、
上を見上げる。



雲一つない。



青が綺麗。


こんな空を、
私はいつも
こう呼ぶ。













「…お前は?」