今日は
波が騒がしい。

と言うより
風が興奮気味だ。


風の声を聞く。


実際に
声が聞こえるのでは
無い。


風が私に
何か伝えたい時は、
海の上に
道を記す。

私はただ、
その上を
辿って行けばいい。


風が言っている。


―こっち、こっち―


昔、
事故で墜落した
飛行機に
案内された事もある。

あまり期待せず、
ゆっくりと
風に
導かれるままに、
波に乗る。

風は
もどかしいのか、
私の背中を
どんどん
押して来る。

くすぐったい。

笑いを
堪えきれず、
思わず
吹き出す。

「あはははは!やめて!分かった。急ぐから…!あは…勘弁して!!あはははは!!」


その時は、


自分の声の
せいで、


遠くでした、
聞き慣れない
波の音に、


まだ

気付いていなかった。