「そうなんだ・・・それじゃあ、私の名前はミクでお願い。」


 なるほど。


「そっちは、本名だろ?」


「読心術?」


「嘘をついているか、どうかぐらい顔を見れば分かるよ。」


 というより、ただの勘・・・。


 当たったようだから、このまま黙っていよう。


「だって、仮名を使わなくちゃいけないほど、やましい人生は送ってないもの。」


 言われた・・・。


 何となく言われなくないこと言われた!


 でも・・・


「俺だって名乗りなくて名乗ってるわけじゃないやい。」


 悔しいから反論してみた。


「それでも、親からもらった名前を大切にできない人生なんて悲しいよ。」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「そうだな・・・。」


 反論ができるはずがなかった。


 自分だって、本当は大切にしたかったんだ。


 だけどできなかった。


 名乗れば・・・殺されるから・・・。


 この名前を持つ者は、生きていてはいけなかったから・・・・・・。


 俺だって、できることなら自分の名前ぐらいは誇りを持ちたいよ・・・。