「え?」


 まさか、返事が返ってくるとは思わなかった、少年は予想外の出来事に、少年はあわてて腰を上げて、周りを見渡す。


 誰・・・?


「フフフ・・・先ほどから、考えていること全部口に出すんだもの。聞いていて何度も笑いそうになっちゃったわ。」


 そこにいたのは、少年と同年代と思われる若い少女。


 長い金髪に、大きな青い瞳をしておりソバカスが頬の周りにちりばめられている。


 彼女のまとっている白い布地をしたワンピースには、たくさんの装飾が施されており、一見すると、豪華絢爛な服装をまとったお嬢様のようにもみえた。


「・・・・・・・・だれ?」


 とりあえず、真っ先に口にするべき質問だった。


「あら?レディに名を聞くときには、自分から名乗るのが紳士のたしなみでしょ?」


 クリクリとした瞳でこちらを眺めながら、愛らしい笑顔を向ける少女。


 ・・・・思わず自分の顔が高揚したのが分かった。


「先に声をかけたのは、そっちなのに・・・。」


 とりあえず、自分は商人であって紳士ではないよ・・・という言葉は伏せておいた。


「それでも、名乗りは別です。」


 厳しい女性だ・・・。


「あぁ・・・それじゃあ、俺の名前は『スイ』」


「仮名ですか?」


 鋭いな・・・。


「本名は長くて俺も覚えていないんだよ。」


 事実は違っていたが、さすがに人前で名乗れるはずがないのだ。


 北の民の証である『スウィートウォータ』の名を持つ者は、決して外部では名乗ってはいけない・・・。


 たとえそれが、この世で『北の民』が自分ひとりになってしまおうと・・・。