「何度でも言ってやるよ。火の民『ファイヤークオール』おのれの使命を忘れて、火のありがたみを捨て、神に反旗を翻した愚か者だ。」


 スイたち、『北の民』と相反する民族。


 それが、南の民、別名『火の民』だった。


 水を崇拝する北の民とは対照的に彼らは火を崇拝していた。


 火は、命の源、光の根源。


 暗い世界に明かりをともし、冷めた身体を温め、心と身体に潤いを与えた。


 長老が言っていた。


 火の民は我々『北の民』同様、誇り高き民族だった。


 しかし、どこの馬鹿が『機械』などという、ワケのわからないモノを作り出すから・・・使命を忘れ、火の恐ろしい一面しか見えなくなったのだ。


 人を燃やし、街を燃やし、国を燃やす、破壊の象徴。火。


 そんな火の一面に捕らわれてしまうから、お前たちは『帝国』なんて馬鹿げたものを作り上げてしまったのだ。


「貴様・・・その名は我々に対する愚弄だぞ!この誇り高き騎士ガラドに向かって!」


「火の民は火の民だ!おとなしく暖炉の番人でもしていろ!」


 一度外れた関は止まることを知らず、スイの口からあふれ出る。


 当たり前だ。


 黙っていたが、スイはこいつの顔を知っていたのだ。


 幼い頃、自分の村を焼き払った張本人。


 母を焼き、父を殺し、村を襲った。


 本当ならば、殺してやりたい。


 許されるならば、今すぐコノ場でこいつを殺してやりたい・・・。