「ありがとう。ミリト・・・それで、私たちはどこに行けば・・・。」


 そこまで口にした瞬間だった。


「その必要はない。」


 声が聞こえた。遠くからだけど、こちらにもはっきりと聞こえる声。


 威圧的な若い男性のものだ。


 顔を向けると、そこにいたのは銀色の甲冑に身を包んだ、一人の若い騎士。


 黒い巨大な馬に乗っており、剣の他にも腰には最新鋭のピストルという武器が見ることができた。


「どうも、怪しいと思い、コノあたりを散策してみれば案の定だ。貴様がこの村のうたびとか?」


 馬から下りて、ミクの前に立ちはだかる騎士。


 身長、体格からして、さっきあった酒場の主人ぐらいだろうか。


 ただ、目つきは先ほどの主人より数倍は悪いな・・・。


「・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・。」


 ミクもスイ、ミリトも返事を返さない。


 当たり前だ。


 こんな高圧的な態度でせっかく咲かした花を踏み荒らしたお前なんぞに、どんな言葉で返事を返せるというのだ。