「お~い、ミク様・・・こんなところにいたのか・・・。ってなんだコノ花?あ、あと水売りさんまで、ちょうどいいところにいた。」


 二人の大切な時間は、突如現れたヒョロヒョロの男によって邪魔された。


 長身で痩せ型、幸薄そうな顔はどこなく親近感を覚えてしまう。


「どうしたの?ミリト?」


 ミリトと呼ばれた青年に返事を返すように、立ち上がるミク。


「今、帝国軍の連中がコノ村に・・・なんでも『うたびと』を差し出せとか・・・」


「!」


「!」


 その表情に驚いたのは二人同時。


 思うところはただ一つ。


「まさか・・・・・・・『うた狩り』?」


 そんなことがあるはずはない。


 いや、でも十分に考えられることだった。


 産業化が進む、帝国軍にとって奇跡を起こす『うたびと』は正直邪魔な存在。


 だから、各国のうたびとを捕らえ、己が作った武器で公開処刑をする。


 ・・・・・・・・自分たちが作る『産業』がどれだけ優れているのかを、証明するために。


 殺される前に、処刑官は尋ねるのだ。



『殺されたくなければ、奇跡の歌とやらを歌い、コノ場を回避し見せるのだな?』



 ・・・ただの噂話だが、火のないところに煙は立たない。


「だから、ミク様はとりあえず非難を・・・あとついでに水売りさんも・・・あんたも帝国軍に見つかったらまずい立場だろう?」


 ・・・・・・・・ばれていたのか。


 そりゃ、酒場でアレだけのデモンストレーションをして見せれば、バレもするか・・・。