「だって・・・ここは帝国より下の村だから・・・。」
目をうつぶせ、悲しそうな表情を見せる、ミク。
・・・・仕方ない・・・。
こんな小さな村ではどうあがいても無駄。
・・・帝国の言いなりになるしかない・・・。
その表情が言っていた。
「・・・・・・・・知ってるよ。だから、こうして俺が水を売っているのだろう?」
産業革命だが、なんだか知らないが、たくさんの機械と武器はそれだけ川を水を汚す。
酷いところでは水が赤くそまっていて、魚が一匹もいなかった。
・・・・・・・そんなもの、既に川と呼べる代物ではない。
「だから、どうしようもないんだよ・・・。村長が言っていた。コノ川はもうダメだって・・・。川がダメだと、村がダメだって・・・。」
悲しそうなミクの表情。
おそらく、彼女もどことなく自分の歌声が未熟な理由は分かっていたのだろう。
そして、それがコノ村にどのような末路を用意しているのかも・・・。
「空と同じ色をした水は人を生かす。だけど、赤い水は人を殺す・・・黒い水は国を壊す・・・。」
「え?」
「俺の村に古くから伝わる伝承だよ。水は空と同じ色でなければいけない。青空の下では青い水を、夕焼けの空の下では赤い水を、漆黒の闇夜では黒い水を・・・。水はそうでなければいけない。」
だけど・・・・帝国が、機械が、武器が、戦が、それを汚した。
水を赤く染め、黒く染め、人を殺し、国を壊した。
だけどそれを咎めるものは誰もいない。
咎めるべき・・・俺たちの民は・・・・・・・滅ぼされたのだ・・・・・・。