「!」


 驚いたのは、他でもないうたびとたる、ミク本人だった。


 当たり前だ。


 先ほどまで自分の周りにしか咲いていなかった花が、今度はスイのところはおろか、目線のはるか先まで咲き誇っている。


 今度はミクの周りだけではない。


 本当にこの地域一帯に春が訪れたのだ。


「すごい・・・。」


「本当は自然系統を狂わすから、やっちゃいけないのだろうけどね・・・。ミクの力はすごいよ。」


 力を使いすぎたせいで、一気に疲れをスイの身体を襲う。


 しばらくはココからは動けないだろう。


「それだけじゃないでしょ?いったい、どんな魔法なの?魔力増幅とか?」


 興味心身に効いているミク。


「そんな野蛮なものじゃないよ。秘密はミクの喉だよ。」


「喉?」


「そう・・・ここに来る前にミクたちの村の川を見せてもらったけど、大きな魚が一匹もいなかった。」


「それが、何の関係があるというの?」


「下流なのに、大きな魚がいないって事はそれだけ川の水が汚れているんだよ。あんな水で生活していたら、自然と喉だってやられてしまう。」


 うたびとは、喉が命。


 汚れた水は、大切な巫女の喉をつぶし、やがて村を滅ぼすだろう。


 ・・・・・・・・・・水を粗末するものは、命を粗末にしていると同罪じゃ。


 そうだな・・・長老・・・。