「昔?」
「そう、お母さんはね・・・きちんとした『うたびと』だったの。だけど、お母さんが死んで私がうたびとを引き継いでからは全然ダメ。最初に言ったでしょ。私は『なりこそない』なの。」
それは、ミクが見せるとても悲しそうな表情。
・・・・・・・なりそこない・・・・。
その意味を分からないほど、スイも無粋ではない。
力が余りに未熟なのだ。
うたびとの役割は奇跡を起こし、村を活性化させる。
農作物を育て、災害を遠ざけ、争いを鎮める。
あたり一面に花を咲かせる程度の奇跡ならそこらへんにいる『魔道師』だってやってのけるだろう。
・・・・・・未熟なうたびと。
自分がこの村のうたびとになってしまったため、この村は寂れた。
・・・・・・・・すべて自分のせいなのだ。
彼女の表情が言っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・なぁ、ミク、さっきの歌もう一度歌ってくれないかな?今度はこの水を飲んでさ。」
言いながらスイは商売道具の水筒を一本取り出し、ミクに渡す。