歌はここで終了した。


 彼女が歌い終わったとき、あたり一面には花が咲き誇っていた。


 それはまるで、彼女の周りだけが春になったようだった。


「うたびと?」


 思わず、口に出ていた。


 歌を通し、神々と会話をして、奇跡を起こす巫女。


 古き伝統がある、大きな村や街ならともかく、まさかこんな田舎の小さな村にそんな存在がいるなんて・・・。


「なりそこないだけどね。」


 言うと、ミクはヘヘッと笑った。


 確かに、うたびととしては、彼女の咲かした花の数はあまりに少数。


 本当に彼女の周り程度だった。


「それでも、すごいよ。こんな若くて、綺麗なうたびとなんて俺始めてみた。」


「ありがとう。そういってもらえると嬉しいよ。」


 言うと、少女は再びその場に腰を下ろす。


「でも、うたびとがいるなんて、思った以上にいい村だったんだな。」


 うたびとがいるということは、それだけ、コノ村には伝統と格式。


 そして、お金があるというコト。


 すっかり、寂れて小さな村だと思っていたが、勘違いだったらしい。


「昔はね・・・。」


 それを口にしたとたん、ミクの表情が曇る。


 ・・・・・あれ?