稚奈の言葉が

 聴こえていないかのように

 ウェイターは一礼して

 奥へ下がって行った。





「……」





 シン、と

 静まり返る店内。




 カチッ、コチッ、と

 規則的に時を刻む

 柱時計の音がやけに響く。




 なんだか、落ち着かない。




 稚奈は

 ラムネ色のグラスをとって

 ひとくち、水を飲んでみた。




 ?




「……すごく、美味しい?」





 また一口、水を飲む。




 胸の奥のチクチクした何かが

 薄れていく気がした。




 また、ひとくち



 また一口……。




 胸の奥が和らいでいく。





 その水がなくなった頃



 奥から、また

 ウェイターが現れた。





「お待たせいたしました」