「ご注文は、うけたまわっております」





「えっ!?」





「こちらへお掛けください」





 その男の

 有無を言わせない笑顔に導かれ

 稚奈は

 その店の1つだけある椅子に

 腰を下ろした。





「……」





 薔薇の花が彫られた

 ダークブラウンのテーブルに

 ラムネ色のグラスが置かれる。




 ウェイターなのだろうか

 慣れた手つきで

 その男は

 水差しからグラスへ水を注ぐ。





 どうしよう

 注文なんてした覚えがない。





「あの……」





 稚奈は困って

 その男を見上げた。





「ご注文は、ここへ入った時にうけたまわっておりますよ?」





 ウェイターは

 にっこりと笑って

 稚奈の聴きたい言葉を

 さえぎった。





「えっと、……でも」





 メニューも何も

 誰ともしゃべっていないのに?