それは

 どのケーキ屋でも

 カフェでも

 置いていないような



 奇妙に美しいカタチをした

 ドルチェ……。




 どんなパティシエが作ったんだろう?










「いらっしゃいませ」





 ドキンッ☆





 不意に

 近くで男の人の声がした。




「カフェ、『クール・ペルドゥル』へようこそ」




 声のほうを見上げると



 スラリとバランスのとれた

 背の高い若い男の人。





 そのやわらかな笑顔が

 見たこともないくらいに

 綺麗で



 稚奈は思わず

 息をのんだ。





「お客様?」





 はしばみ色の瞳が

 不思議そうに稚奈を見る。





「あっ、……えぇっと、すいません!! 可愛くて綺麗で思わず入ってしまいました」





 慌てて出て行こうとすると

 長い手がゆっくりと

 稚奈の進路を阻んだ。





 !?