「とても美味しかったわ、ちょっぴり痛かったけど、おいくらですか?」





 鞄から財布を取り出して

 稚奈はウェイターを見上げる。





「お代は、頂いておりません」





「えっ!? でも……」





「そのかわり、あなたの心のカタチを頂きました」





「心のカタチ!?」





 戸惑う稚奈に

 ウェイターは

 お皿に乗ったドルチェを見せた。




 星の形の

 小さなタルトが幾つも並び

 中にはカスタード

 チョコレートやスイートポテト

 にキャラメルナッツ苺ジャム。



 虹がかかる飴細工のアーチ

 虹のすそには

 パステル色のジェラートが

 丸くくりぬかれて積みあがる。



 小さいマカロンが飾られた

 ホイップの山が幾つも立ち

 キラキラと光る

 金粉がちりばめられ



 更にその回りを

 フルーツを閉じ込めたゼリーが

 踊るように囲んでいた。





 それは



 先ほど食べたモノとは

 くらべようもないほど



 美しいドルチェ。