入れ替えた暖かいお茶を

 彼は

 稚奈にすすめる。





『元の自分に戻るお茶』





 飲み込むと

 ホッと

 身体中にしみ渡るぬくもり。





『我慢しなくていいんだよ?』





 !?





 声が

 聞こえた気がした。




 そばにいるウェイターを見上げると、彼は静かに首を振った。





『失ったモノを、いつまでも追いかけてないで?』





 誰のものでもない声が

 脳裏に響く。



 稚奈は

 もう一口お茶を飲んだ。





『素敵な笑顔、取り戻して?』





「……」





 まさか

 このお茶の、……声?





 止まらない涙を

 ぬぐう指先



 頬に触れた冷たいリング。





「……」





 冷たくなった想いに

 しがみつく必要があるの?





『もう、頑張らなくていいんだよ?』