コンパの次の日、早朝に早速健児からメールがきた。


 『君は誰よりも美しい。俺の心を一瞬にして掴んだ君は、僕の女神、そして天使だ。今
日の午後、君が帰るのを花壇のところで待っているよ。話しがあるんだ』


 歯の浮くようなセリフに、おもわず凛花は笑ったが、わざと面白くするための冗談だと思い、今日の講義が終わったら、花壇のところに行こうと決めた。

 凛花は朝のメールを思い出し、笑いを堪えながら花壇に向かうと健児が待っている。短い足を片方花壇に乗せ、ポーズを取っている。


「健児君、お待たせ」


 笑いながら健児に声を掛けると、健児は振り返り満面の笑顔を見せた。


「あぁ、来てくれたんだね。さぁ、こっちへ」


 健児はそう云うと片手を伸ばし、ミュージカルのような体勢をしている。
 やり過ぎじゃないか、そんなふうに思った凛花は苦笑しつつ健児に近寄った。


「健児君、話しって?」


 すると健児は両腕を広げ、天を仰ぐと愛の告白をしたのである。


「君が好きなんだ、凛花ちゃん。僕の恋人、いや、僕だけの恋人になって欲しい」


 いきなり恋人? 昨日の今日で? 
 そう疑問に思った凛花だったが、健児がユーモアに溢れ、面白い人なのかもしれないと考えた末答えた。


「まだ昨日の今日じゃない。恋人になるのは、これから少しずつ話しをしてからでも遅くないんじゃないかな」


「それもそうだね、じゃ、ありのままの僕を見て欲しいから、今からデートしてみないかい?」


 健児はウィンクしている。片目を瞑るのが下手なのだろう、顔が歪んでいる。
 まぁいいか、話したりデートしてみれば、どんな人か分かると思うし。

 安易にそう考えた凛花は健児とデートすることにした。