泣き虫男の浩平と別れてから、私は再び平和に暮らしている。

　そんなある日のこと、大学時代の友人から連絡がきた。どうやら同窓会をやることになったらしい。
　忙しい毎日の中、久し振りに皆と会えることが楽しみで、凛花の心は弾んだ。

　同窓会の会場へ着くと、懐かしい顔ぶれに凛花のテンションも上がり、昔話に花が咲く。
　しばらく盛り上がっていると、後ろから突然声を掛けられた。


「久し振りだね、凛花さん」


　振り返ると、そこには見知らぬ男性が立っている。背は高く、マッチ棒のように細い身体。そして、色白でアゴはシャクレている。この男性は誰だろう。周りの友人達も皆分からないようで、一斉に首を傾げ不思議そうな表情をした。


「嫌だなぁ、皆、俺のこと覚えてないかな？　まぁ、休みがちだったからね。幸隆だよ」


　友人のうち二人だけが、幸隆を思い出しただけで、私を含め他の友人達はどうしても思い出せなかった。それだけ印象が薄かったのだろう。

　同窓会の二次会に行ったのは、十人未満だったと記憶している。特に仲が良かった友人達。そこへ、何故か印象の薄い幸隆まで着いてきたのだった。
　それが、幸隆と付き合うきっかけになったのである。